三度目の正直 大阪桐蔭が智弁学園に延長サヨナラ勝ちで近畿大会優勝

 こんにちは、Ujiです(@sakushingakuin_)

5月30日に春季近畿大会決勝 
大阪桐蔭 対 智弁学園 
の試合を見てきました。














現チーム3度目の対決であり、全国制覇を本気で目指すチーム同士の対決は1つのミスが命取りになる。それもあってか選手は目の前のことに全力で取り組んでいるようだった。両チーム合わせて四死球は1つ。その1つの四球から得点に結びつくぐらいわずかなチャンスも逃さない。守備も正面の打球はもちろん、ヒット性の当たりでも飛びついて捕球し、一塁手に胸にしっかり投げてアウトにする。捕手はボールを前にこぼしても後ろにも横にも絶対にそらさない。エラーによる出塁も進塁も全くなかった。守備に隙が殆どなかった全国大会の歴史に残るレベルの試合をしていた。この試合を振り返ろうと思います。

目次

スコア











表の△は左打者 ◇は両打
盗塁:宮下(8回)
盗塁死:植垣(3回)、野間(5回)
走塁死:山下(9回)

タップすると拡大してみれるようになっています。

緑線が投手が交代したところです。


戦況

・初回の先頭打者

 上の図は大阪桐蔭戦での智弁学園の初回の攻撃の結果である。智弁学園の先頭打者が出塁すると先制点を挙げてそのまま勝利している(秋の近畿決勝と選抜初戦)。一方で、今回の試合は先頭打者が打ち取られ試合にも敗れた先頭打者の出塁が勝敗に影響したようだ。ちなみに何れの対戦でも先頭打者を2ストライクまで追い込んでいる。プロの世界でも追い込まれたらそうでない時と比べて打率は1割ほど低くなるものだが、それでも安打を打てるところに智弁学園打線の強さを感じる。あと1球が勝負の分かれ目だった。先頭打者を抑え初回0点に抑えた大阪桐蔭は打倒・智弁学園の第一関門を突破した


・2回の攻防 最小失点に抑えた守備とバントの成否

 2回にピンチが訪れる。4,5番の連打などで1死1,2塁の場面で打席は7番谷口くん。6球目を左中間に運ばれ1点を先制された。なおも2,3塁のピンチで打席に8番小畠くん。大阪桐蔭は追加点を与えまいと前進守備を敷いていた。小畠くんはセンターに抜けそうな強烈な当たりを放ったが、セカンド繁永くんが横っ飛びでキャッチ。走者が動かないのを確認してから一塁アウトにした。その後の打者を抑え、最小失点に食い止めた。抜ければもう2点は入っていただろう。チームを救うファインプレーだった。

 直後の攻撃で、先頭の花田くんが安打で出塁し、5番前田くんがバントで送って1死2塁のチャンス。6番野間くんが初球をたたき打球はレフト方向へ。風にも乗った打球はレフトが捕球できず、同点の3塁打に。今まで追いつけなかった大阪桐蔭が初めて追いついた

 この回の攻撃で対照的だったのが送りバントの成否だ。大阪桐蔭は先ほど書いたように5番前田くんが送りバントを成功している。一方で、智弁学園は6番森田くんがバントを試みるもファウルフライに倒れ走者を進めることができなかった。共にバントの後にタイムリーヒットを放ち1点を取っているが、智弁学園がバント成功していたら2点が入っていた。バント失敗によってもう1点を奪えなかったのは大きな痛手だった。

 

・5回を終えて

 5回を終えて両チーム1-1の同点。大阪桐蔭は3安打、智弁学園は4安打で四死球は共に0。3-5回までは打者9人で終了。走者が1人出ており盗塁を試みたものの失敗してしまった。盗塁を仕掛けたのは植垣くんと野間くん。共に50m5秒台の俊足だが、それを阻止するくらい両チームの捕手のスローイングが良かった。隙のない守備からチャンスを作ることも広げることも難しかった。しかし6回にわずかな隙があった。


・両者の課題と強さが見えた6回の勝ち越し

 6回の智弁学園の攻撃。先頭の植垣くんが四球を選んだあと、2番垪和くんが送りバント。一塁線に絶妙に転がった打球を桐蔭守備陣が処理するのが一歩遅れ内野安打に。2回以降訪れたピンチ。3番岡島くんがバントを試みるもフライアウト、4番山下くんを三振に斬って取り2死になったところで5番前川くん。フルカウントからの8球目を弾き返され打球はレフトの前へ。二塁走者が一気にホームに帰り、2-1と再びリードした。

 2番垪和くんのバントは絶妙な位置に転がったのもあるが、大阪桐蔭の打球処理が一歩遅く感じた。この時誰も指示していないと思う。守備の連携に課題があるように感じた。ただこれを隙に感じるくらい試合通じて両チーム打球を完璧にこなしていた。とてもハイレベルな守りあいである

 智弁学園はこの回も送りバントを失敗するなど課題が見えた。バントを成功すれば2,3塁のチャンスで前川くんの一打で2点は入っていた。ここも1点しか取れなかったのは痛手だった。それでも相手の隙を逃さず、わずかなチャンスをものにした智弁学園打線の強さを感じた


・再び追いついた7回

 7回の大阪桐蔭の攻撃。前田くんの二塁打などで2死2塁のチャンス。打席には7番松尾くん。3球目を振りぬき打球は三遊間を破るヒット。レフト前川くんがホームへダイレクト返球を見せるも二塁走者の前田くんのホーム生還が一歩早く、2-2の同点に。勝ち越されてもすぐに追いつく大阪桐蔭。粘りの野球が体現されつつあった。


・9回の必死の守り

 共に4番から始まる9回の攻撃。激しい攻防戦があった。

 まず智弁学園の攻撃。マウンドには7回から竹中くんが登板していた。先頭の山下くんがレフト前ヒットで出塁。続く5番前川くんがフルカウントからライト前にヒット。山下くんは三塁を狙うも、ライト花田くんが三塁へレーザービームで間一髪のところでアウト。相手のチャンスの芽を摘むビッグプレーだった

 直後の大阪桐蔭の攻撃。2死から6番野間くんがこの日3本目の安打で出塁すると、7番松尾くんのところでエンドランを仕掛ける。これが見事成功し、1,3塁と絶好のチャンス。8番繁永くんがサードへのゴロ。サード山下くんが二塁に投げるか迷いつつ一塁への送球。繁永くんが必死のダイビングも及ばず判定はアウト。試合は延長戦に突入する。


・そして決着

 10回の智弁学園の攻撃を三人で抑えた大阪桐蔭。先頭は倒れるも1番宮下くんがヒットで出塁。2番藤原くんはバントを試みるも失敗。カウント2-2で迎えた5球目。打球は高々と舞い上がってライトフェンスを越えるホームラン。試合を決めると同時に近畿大会優勝と三度目の正直を果たした。

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感想

 三度目の正直を果たした大阪桐蔭。春の選抜から投攻守のどれもが1ランク上がっていた。

 まず投手。先発川原くんが6回を投げて6安打2失点。強打の智弁学園相手に十分すぎるほどの好投だった。この日の川原くんは制球が安定していた。大きく外れることがなく、四死球も1つ。この1つも際どいコースだった。打者25人に対し20人に初球からストライクを入れるなどストライク先行の投球。バックも守りやすかったと思う。何より戦況でも述べたように初回の守備を三者凡退、無失点に抑えたのが大きかった。ここだけで前回の試合より成長していることになるし、チームも行ける!となったと思う。

 リリーフした竹中くんもナイスピッチ。昨日は智辯和歌山戦で9回先発完投しており疲れもあったと思う。それでも4回を被安打2の無失点。三者凡退は3度数えた。昨日は9回裏の攻撃で、今日は10回の攻撃で西谷監督は竹中くんをそのまま打席に立たせた。信頼しているのだと思う。選抜までは3番手だったが、この春の大会で主戦まで登りつめた。竹中くんと川原くんと投手が2枚揃ったのが大きな収穫だった。

 投手を支えたのはバックの鉄壁の守り。捕球、送球面で全く不安がなく打球を確実に処理した。連携部分に少し不安を感じたがそれ以外はほぼ完ぺき。エラーする気配がなかった。何より2回の繁永くんのプレーが大きかった。先制されても追加点は許さない。最小失点で抑えたことが直後の攻撃に繋がった。

 打線も粘り強かった。5回以降は毎回のように安打を放ち、長打や盗塁、エンドランなど長打力と機動力も絡めて何度もチャンスを作った。あと一本が遠かったが、ボディーブローのように効いていたと思う。それが10回のホームランに繋がったと思う。


一方で、智弁学園も強かった。こちらも投攻守がハイレベルだった。

 先発小畠くんも制球が安定しており、四死球は0。また、得点圏に走者を置いても簡単に点を与えなかった。6回のピンチで池田くんにストレートで真っ向勝負を挑み、空振り三振に斬って取った。球速は140キロを越えていた。延長戦に入っても続投したが、最後まで投げぬくのではとおもったくらい。エースの気迫を感じた

 守備も鉄壁。山下くんが何度も見せた、ヒット性の当たりを好捕し、一塁手の胸元にしっかり投げてアウトを奪った。こちらも捕球、送球面で全く不安がなかった。また、内外野がJK(準備・確認)をしっかり行っていた。誰が二塁ベースに入るのかなどあらかじめ決めておけば、迷いなくプレーすることができ、ミスを防げ、併殺などの連携プレーもしやすくなる。今回は併殺など連携プレーが見れなかったが、もしあればスムーズにできたかもしれない。まだまだ守備に引き出しがあるように感じる

 攻撃面でも、唯一の四球を足掛かりに1点を奪うなどわずかな隙を逃さない強かさがあった。4番の山下くん以外は変動しているのに打線は機能しているように感じた。1番打者植垣くんは先頭打者として2度出塁し、ホームにも帰っている。5番前川くんは3安打。全方向に放ち、チャンスメイクと走者を返すと様々な役割を果たした。6回の勝ち越し打は追い込まれながらもファウルで粘り最後は少し甘く入ったものを痛打したものだった。川原くんは逃げずに投げていたが、ここは前川くんが一枚上手だった。勝初戦でホームランを放つなどパワーに目が行きがちだが、状況に応じた打撃ができる長所を見つけた。

 一方でバントとベースランニングで課題が出た。2回と6回で0死1,2塁から送りバントを試みるもフライアウト。後の打者がヒットで1点を得たものの、バントが決まればもう2点は追加できた。そう考えるともったいないプレーだった。

 あとベースランニングが気になった。2回の0死1塁から5番前川くんがセンター前ヒット。1塁走者の山下くんは二塁ベースを通過するとき減速して小刻みに走っているように見えた。これが9回にも現れた。前川くんのヒットで山下くんが三塁を狙うも花田くんの返球が早く、アウトになってしまった。自分の走路をみつけ、加速しながらベースランニングができていたらセーフになっていた。これも惜しい。先ほどのバントとベースランニングが改善されれば、智弁学園打線は得点力が増すただでさえ投攻守にハイレベルなのにまだ伸びしろがあるのかと考えると脅威でしかない


 大阪桐蔭は智弁学園に勝ち上がるまでに一戦ごとに強くなっていた。初戦の綾羽戦では大量リードも終盤に追い上げられ僅差での勝利。準決勝の智辯和歌山戦では先制されるもすぐさま同点に。そのまま両チーム点が入らない緊迫した展開。我慢を強いられたが踏ん張り、9回にサヨナラ勝利。この試合はリードされるも追いつくこと2度。最後はサヨナラ勝ち。新チーム結成時は殆どコールド勝利したため接戦を経験できなかったが、この近畿大会で色んなパターンの接戦を経験しすべてものにした

 秋まで主戦だった松浦くんと関戸くんが登板できなかったのは誤算だったが、竹中くんと川原くんが成長し先発できる投手が2枚もできた。打線も4番花田くんになってからうまく機能している気がする。

 春季大会は冬の成果を試すこと、夏への課題を見つけること、シード権を獲得するなどとても重要で貴重な公式戦である。昨年中止になったのは大きな痛手だった。コロナの恐怖が去年より増している今年だが、大会を開催し最後まで続けることができた。試合の場を設けていただいただけでもとてもありがたい。そんななか大阪桐蔭は1戦1戦試合をこなすことができた。一戦ごとに強くなり、選手も育ち、収穫と課題も得た。最後は宿敵智弁学園に勝った。最高の形で春季大会を終えることができた。後は夏の大会が無事開催できることを祈るばかりだ。

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